この記事ではこのような悩みを解決します。
統合失調症のような精神障害を抱えていると、自分の力だけで就職することは非常に困難です。そんなときは障害福祉サービスである「就労移行支援」や「就労継続支援」を利用しましょう。
しかし、この2つの違いについて詳しく知らない方もいらっしゃるかもしれません。そこでこの記事では「就労移行支援」と「就労継続支援」の違いについて詳しく解説します。
たちばな
統合失調症の当事者のたちばなが執筆しています。デイケア・就労移行支援・就労継続支援A型・障害者雇用・クローズ就労など様々な働き方を経験し、現在はフリーランスのWeb制作者として活動しています。Web制作は1999年から始めたベテラン。スキルを生かして統合失調症などの障害者でも自分らしく働くための情報を発信中です!
・就労継続支援は働く場、就労移行支援は訓練の場
・就労継続支援と就労移行支援は併用できない
・職場定着を支援する就労定着支援というサービスもある
目次
就労継続支援とは
就労継続支援とは、障害や病気などの理由により一般企業への就職が難しい方のために、障害に配慮されながら働くことができる福祉サービスのことです。サービスの内容によって「A型」と「B型」の2つに分類されます。
就労継続支援A型とは
就労継続支援A型とは、事業所と雇用契約を結んで働ける福祉サービスのことです。雇用型と呼ばれることもあります。一般企業への就職は難しいが、障害への配慮があれば、ある程度の業務ができる人を対象としています。
感覚的には短時間のアルバイトに近い感じです。多くの就労継続支援A型事業所では、最低でも1日4時間は働くことが求められており、事業所によっては1日8時間で週40時間のフルタイムで働けるところもあります。
収入は給与という形で支払われます。最低賃金が保証されるので、それなりの金額になりますが、実際には障害年金と併給しないと暮らせない程度の金額です。
就労継続支援B型とは
就労継続支援B型とは、事業所と雇用契約を結ばずに働く福祉サービスのことです。非雇用型と呼ばれることもあり、A型での仕事が難しい障害者や年齢や体力の都合で一般の企業で働けない人などを対象としています。
「しっかり働く」というよりも、障害者にとっての「居場所」のようなサービスを提供していることが多いです。もちろん、事業所によっては生産活動の一環として簡単な作業を行いますが、特に難しいノルマとかはありません。
収入は工賃という形で支払われます。ほとんどの場合、最低賃金以下の時給での金額となるので、収入面では非常に少ないのが現状です。
就労移行支援と就労継続支援の違い
就労継続支援と似た福祉サービスに「就労移行支援」があります。就労移行支援とは、一般企業への就職に向けて、職業訓練やビジネスマナーなどのスキルを訓練する福祉サービスのことです。
就労移行支援は、あくまでも訓練の場としての福祉サービスですので、給料は発生しません。さらに生涯で原則2年間の利用制限が設けられています。ただ実際には、最大で12か月の延長が認められているので、利用者によっては3年間利用するケースもあります。
就労移行支援と就労継続支援の違いを表にすると以下のようになります。
就労移行支援 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
対象者 | 一般企業への就職を目指している障害者 | 通常の事業所に雇用されるのが困難な方 | 通常の事業所に雇用されるのが困難な方 |
目的 | 就職に向けてスキルアップする | 就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供 | 就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供 |
雇用契約 | なし | あり | なし |
給料 | なし | あり(給与) 平均月収 7万円程度 | あり(工賃) 平均月収 2万円程度 |
利用期間 | 原則2年以内 | 定めなし | 定めなし |
年齢制限 | 65歳未満 | 65歳未満 | 定めなし |
就労移行支援と就労継続支援は併用できない
原則として就労移行支援と就労継続支援は併用できません。これはこの2つの福祉サービスの目的が異なっているからです。
ただ障害福祉事業所の中には、就労移行支援と就労継続支援の両方のサービスを提供しているところがあります。このような事業所では、まず就労移行支援を利用してもらって一般就労を目指していただき、がんばって就職活動したけど、どこにも就職できなかった利用者さんのために、就労継続支援の利用者に移行してもらうことが多いようです。
またはその逆で、まずは就労継続支援B型やA型の利用者として生活や体調を整えてから、就労移行支援の利用者に移行して一般就労を目指すというケースもあります。
就労移行支援と就労継続支援の選び方は?
就労移行支援と就労継続支援のどちらを選べばいいのか、よく分からない方もいらっしゃるでしょう。どちらも障害者の仕事に結びつくサービスであることは共通しているので、まずは自分が将来どのような働き方をしたいのかを決めておくことが大切です。
ここでは、就労移行支援と就労継続支援のどちらに向いているのかを簡単に解説します。
・一般企業への就職を目指している人
・2年程度は無収入でも大丈夫な人
・就職に必要な本格的な訓練をやりたい人
・障害に配慮されながら働きたい人
・一般企業で働くのはしんどい人
・最低賃金以上の収入が欲しい人
・自己管理がしっかりしていて、1日4時間以上は働ける人
・障害に配慮されながら働きたい人
・一般企業で働くのはしんどい人
・がっつり仕事というよりは、まずは居場所が欲しい人
・体調を整えながら、毎日通う場所が欲しい人
上記のような条件に自分が当てはまっているかどうかで、利用する福祉サービスを検討しましょう。
注意点としては、就労移行支援も就労継続支援も日々の事業所への通所が必要であるという点です。これは、これらの障害福祉サービスを提供している事業所への報酬が、利用者の通所を条件としているからです。しかし最近ではテレワークでの訓練や仕事が認められている事業所もあるため、一概に通所が必要とは言い切れません。
就労定着支援とは?
2018年4月から新しく「就労定着支援」というサービスがスタートしました。これは障害者雇用で一般企業で働いている障害者に対して、その会社で長く働き続けられるようにサポートする福祉サービスです。
障害者雇用で働いている障害者の勤務先に支援員が訪れて、仕事上での悩みやトラブルを解決するために、さまざまなサポートを受けられることを目的としています。
障害者にとって仕事上の悩みを、同じ職場の先輩や上司に直接相談するのは難しいものです。そこで就労定着支援の支援員が間に入って面談したり、自分の代わりに会社の人と相談したりしてくれるのです。
もともと就労移行支援には就職後最大で6か月の定着支援のサービスがあったのですが、この仕組みを更に進めて、最大で3年間の定着支援を制度化したものが就労定着支援です。
自分にあった福祉サービスを利用しよう
障害者にとって就職は大きな目標のひとつと言えるでしょう。そのための福祉サービスが就労継続支援や就労移行支援です。まずはサービスの内容をよく理解して、自分に合ったサービスを利用することを検討しましょう。