この記事ではこんな疑問に答えます。
統合失調症は精神障害の中でも重い障害であり、良くなったり悪くなったりを繰り返す傾向があります。
ストレスにも非常に弱くなってしまうため、仕事に耐えきれず休職してしまう方も後を絶ちません。
しかし、十分な静養と治療を受ければ、たとえ休職してしまっても仕事に復帰することは可能です。
この記事では、統合失調症で休職を考えている方や休職中の方に向けて、休職してから仕事に復帰する方法を解説します。
たちばな
統合失調症の当事者のたちばなが執筆しています。デイケア・就労移行支援・就労継続支援A型・障害者雇用・クローズ就労など様々な働き方を経験し、現在はフリーランスのWeb制作者として活動しています。Web制作は1999年から始めたベテラン。スキルを生かして統合失調症などの障害者でも自分らしく働くための情報を発信中です!
・統合失調症でも仕事に復帰できる
・服薬や通院、軽い運動習慣を身に付けることが重要
・まずは「試し出勤」から復職するケースもある
目次
統合失調症は仕事に復帰できる?
結論からいうと、統合失調症の方でも仕事に復帰できます。もちろん、症状が悪化している状態では難しいのですが、しっかりと服薬して十分な静養を取り状態が安定しているという条件付きです。
しかし、統合失調症の症状を改善させるのはなかなか大変です。職場復帰への焦りから、十分に回復しないまま復職してしまい、症状を再発させてしまうケースも少なくありません。
また「自分はもう治った」などと自己判断で服薬を止めないことも重要です。
統合失調症で仕事に復帰するには、業務を遂行できる程度まで状態を安定させることが必要なのです。
統合失調症で仕事に復帰するためにやるべきこと
統合失調症の方が仕事に復帰するためにやるべきことは次の通りです。
・服薬を徹底する
・定期的な通院を欠かさない
・デイケアや就労移行支援を利用する
・生活のリズムを整える
・軽い運動習慣を身につける
・とにかく無理しない
一つずつ見ていきましょう。
服薬を徹底する
まずは主治医から指示された薬の服薬を徹底することが重要です。統合失調症では薬物療法が最も重要とされています。
もし服薬を止めてしまうと、幻聴や妄想などの陽性症状が再発する恐れがあります。そうなってしまうと、仕事に復帰するどころではありません。日常生活にも悪影響が出てしまうでしょう。
現在服薬している薬の効果がイマイチなら、主治医と相談して薬を変えることも検討しましょう。ただし変薬は効果を見極めるのに時間がかかります。必ず効果があるとも限りませんので、そのことは心得ておきましょう。
定期的な通院を欠かさない
服薬に合わせて定期的な通院を続けることも大切です。特に主治医との診察は、統合失調症の治療と並行して、仕事に復帰するためにやるべきことを整理する良い機会にもなります。
通院時にカウンセリングを受けるのも良いかもしれません。医者との診察で見落とされてしまう、ストレスや不安なことを解消するのに、カウンセリングが効果的です。本人の思考や認知のゆがみを調整するのにも良い効果があります。
定期的に通院することで、自分の統合失調症の状態の推移が分かります。その時の状態に合った助言も主治医から得られますので、復職を成功させるには、定期的な通院を止めないようにしましょう。
デイケアや就労移行支援を利用する
統合失調症の症状が落ち着いたら、デイケアや就労移行支援など社会復帰のための福祉サービスを利用することも検討しましょう。
デイケアは精神科病院と併設されていることが多い施設です。リワークなど復職のためのサービスを行っているところもありますが、基本的には日中の居場所としての機能を提供しているところがほとんどです。簡単な軽作業などのトレーニングが行われています。
就労移行支援は障害者が就職を目指すための訓練施設です。ビネスマナーや履歴書の書き方から、PCスキルや軽作業などの就職のための訓練が行われています。事業所によって訓練内容が異なりますので、利用する前に見学や体験などをして、慎重に検討しましょう。
就労移行支援については以下の記事で詳しく解説してるので、ぜひご覧ください。
社会人経験が少なかったり、就職に向けて資格・スキルを身につけたい人は就労移行支援の利用がおすすめです。まずは見学・体験から始めましょう。
・【東京】atGPジョブトレ 統合失調症コース(統合失調症特化型)
・【全国】LITALICOワークス(一般型)
・【東京・大阪】キズキビジネスカレッジ(専門スキル型)
生活のリズムを整える
起床時間や就寝時間を決める、毎日きちんと3食取るなど、生活のリズムを整えることも仕事に復帰するには必要です。
基本的に会社は始業時刻と終業時刻が決められています。そのため生活リズムが整っていないと、通勤を安定させるのは難しいかもしれません。
もし自力で生活リズムを整えるのが難しければ、いきなり復職するのではなく、デイケアや就労移行支援などを使って、生活リズムを整えておくとよいでしょう。
軽い運動習慣を身につける
散歩などの軽い運動習慣を身に付けることも大切です。
統合失調症の症状が軽くなってきたら、軽い運動から始めて少しずつ体力を身に付けていきましょう。
就職して会社に通勤する場合や、日中の仕事をこなすためにも、最低限の体力が必要だからです。
散歩がきつい場合は、とにかく1日1回は自宅から出るようにするだけでも、効果があります。まずは自分にとってできる範囲で軽い運動を続けるのがおすすめです。
とにかく無理しない
統合失調症の方にとって仕事は高いハードルです。もちろん仕事に復帰するためには乗り越えなければならないハードルですが、それでもまずは無理しないことを心掛けましょう。
休んでいる期間が長くなると、どんどん仕事に復帰しなければと焦ってしまいがちです。しかし、焦って仕事に復帰したとしても、状態が悪化すると、再度休職が必要になってしまうことも起こりえます。
そうならないためにも、主治医やカウンセラーなどの支援を受けて症状を安定させ、会社の上司や人事などと復帰後の仕事内容や仕事量をきちんと相談してから、仕事に復帰するのがベストなのです。
復帰直後は、短時間勤務からスタートして、徐々に勤務時間を増やしていくなどの配慮を受けることも検討しましょう。
統合失調症が仕事に復帰する流れ
統合失調症の方が仕事に復帰するまでの具体的な流れを解説します。
【ステップ1】通院・服薬で症状を改善させる
まず、通院と服薬で統合失調症の症状を改善させます。完全に症状をなくすことは難しいかもしれませんが、まずは少しでも幻覚や妄想などの症状を減らすことを目指しましょう。
ある程度症状が落ち着いたら、リワークなども活用して、仕事への復帰を目指して少しずつ体力の向上と生活リズムを安定させていくと良いでしょう。
【ステップ2】主治医から復職許可の診断書をもらう
統合失調症の症状が改善したら、主治医と相談して復職許可の診断書をもらいます。この診断書には、就業上の配慮などの主治医の意見が書かれており、休職している社員が復職できるレベルまでに回復していることが主治医の意見として記載されています。
ただし主治医はあくまでも医学的な立場で社員の復職の可能性を判断しています。仕事に必要な業務遂行能力があるかどうかまでは考慮していないことは理解しておきましょう。
【ステップ3】会社に診断書を提出
復職許可の診断書を会社に提出します。この診断書の内容をもとに会社はその社員が仕事復帰できるかどうかを判断します。
【ステップ4】上司や産業医と面談する
診断書をもとに、上司や産業医と面談します。この面談で職場の現在の状況や復帰後の仕事の進め方などを確認します。
復職の可否は診断書だけでなく、上司や産業医の意見も重視されます。さらに会社の都合や復職を希望する社員の希望なども考慮しながら、復職の可否は慎重に判断されます。
【ステップ5】復職日を決定する
面談の結果、復職可能と判断されたら復職日を決定します。
【ステップ6】復職
復職日が来たら、いよいよ復職です。本人の回復状況を見極めるために、まずは「試し出勤」からスタートすることもあります。
試し出勤とは、正式な復職の前に行われるものであり、リワークなどの「模擬出勤」や、自宅から職場の近くまで行き一定時間過ごすだけの「通勤訓練」などがあります。
自分の状態を考えながら、無理しない範囲で少しずつ仕事量や業務範囲を増やしていきましょう。
統合失調症でも仕事に復帰はできる
統合失調症で休職した場合、その休職期間をどのように過ごすのかが重要です。無理せず治療に専念することも重要ですが、仕事復帰のためにやるべきことを整理したり、苦手分野の克服や、復職後に必要となるスキルを身に付けるための時間に充ててもよいでしょう。
休職中の時間で、デイケアやリワークなど、復職をサポートする支援施設を利用するのも良いでしょう。あくまでも無理しない範囲で、仕事復帰のためにできること前向きに考えていくことが、復職を成功させる鍵となります。