この記事ではこんな疑問に答えます。
障害者雇用でも事務職は人気のある仕事の一つです。パソコンを使った仕事であるため、パソコンスキルをうまくアピールできるかどうかで、内定が取れるかどうかが決まります。
だからといって、極端に高度なスキルをアピールしたり、なんでもできるなどとアピールするのはのはNGです。採用担当者から評価されるどころか、逆に会社の仕事が分かっていないと思われてしまうこともあります。
そうならないためにはどうしたらよいのでしょうか?この記事では障害者が就職活動でパソコンスキルをうまくアピールする方法を詳しく解説します。
たちばな
統合失調症の当事者のたちばなが執筆しています。デイケア・就労移行支援・就労継続支援A型・障害者雇用・クローズ就労など様々な働き方を経験し、現在はフリーランスのWeb制作者として活動しています。Web制作は1999年から始めたベテラン。スキルを生かして統合失調症などの障害者でも自分らしく働くための情報を発信中です!
・Word・Excel・PowerPointは障害者雇用でも評価されるパソコンスキル
・Web制作やプログラマーなどを目指す場合は専門的なスキルも必要
・過去の仕事で活用してきた実務経験が最も評価されやすい
目次
履歴書でパソコンスキルをアピールする方法
障害者雇用においても就職活動では履歴書が必須です。履歴書でパソコンスキルをアピールするのに最も効果的なのが取得している資格を記載することです。
パソコンスキルをアピールできる代表的な資格は次の通りです。
・MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)
・ITパスポート
・P検
・日商PC検定
など
特にWordやExcelのスキルを証明できるMOSは障害者雇用においても評価される資格であり、事務職を目指すのであれば出来るだけ取得しておきたい資格の一つです。
また、履歴書でパソコンスキルをアピールする際には、資格名に加えて、自己PR欄でどのようにパソコンを操作できるのかも併せて記載しておくと良いでしょう。
以下、ソフト別のパソコンスキルのアピール例を紹介します。
【具体例】ソフト別パソコンスキルのアピール例
パソコンスキルと言っても、使用するソフトによってできることは大きく異なります。ここでは代表的なソフトや技術別にパソコンスキルをアピールするときの具体例を解説します。
Word
Wordはマイクロソフト社が開発している文書作成ソフトです。
Wordのスキルをアピールするには、まず文字入力に問題がないことと、印刷を想定された文書のレイアウトが思い通りにできることを重視しましょう。
たとえば、フォントの色や大きさと種類、文書の余白の調整、中央揃えや左・右揃えなどが重い通りにできることは重要です。
また表の作成や画像の挿入などもスムーズにできることを併せてアピールすると高評価です。
Wordを使う業務として、見積書や請求書、送付状などのビジネス文書の作成があげられます。これらの文書の作成ができるのであれば、自信をもってアピールしましょう。
Excel
Excelもマイクロソフト社が開発している表計算ソフトです。
Excelの主な機能は表作成・グラフ作成・複雑な計算の3つです。これらの機能を使いこなすためには、SUM関数やAverage関数、Vlookup関数などの基本的な関数の知識が欠かせません。
またExcelには操作を自動化するマクロやVisual Basicを使ったVBAプログラミングなどの高度な機能もあります。これらはExcelの基本機能から一歩先のスキルであり、身に付けておくとIT企業などでも高く評価されるでしょう。
PowerPoint
PowerPointはプレゼンテーションの資料作成に使われるソフトです。
WordやExcelに加えると、重要度が一つ下がるソフトですが、それでもPowerPointのスキルを必要としている職場は少なくありません。特に営業事務の仕事では営業がプレゼンするときのスライド作成を依頼されることも多く、PowerPointのスキルを存分に発揮できます。
スライドといっても、アニメーションや効果音が含まれているものもありますし、わかりやすいスライド作成のためにはデザインの基本的な知識も欠かせません。
ただ、WordやExcelほど複雑な機能は少ないため、一度操作を覚えてしまえば、事務職の方にとっては大きな武器となるソフトの一つといえるでしょう。
HTML/CSS
HTML/CSSはパソコンのソフトではなく、Webサイトの制作に使われる言語のことです。HTMLは文書の構造、CSSは文書のデザインを指定するときに使われます。
HTMLとCSSと言っても、技術的にはかなり奥が深く、Webページを思い通りにできるくらいのスキルを身に付けるにはかなり時間がかかります。
Webページを丸ごと制作するのではなく、既存のページを少し修正する程度であれば、それほど難しくありません。
中小企業では専門のWeb担当がいないケースもあるため、専業でなくてもHTMLやCSSを使いこなせる人材は思いのほか重宝されます。
グラフィックソフト(Photoshop/Illustrator)
グラフィックソフト(Photoshop/Illustrator)はWebサイトやチラシなどのデザインに使われるソフトです。Web制作会社や広告代理店などデザイン制作の会社を希望しているのであれば、これらのグラフィックソフトのスキルは必須です。
グラフィックソフトのアピールに最も効果的なのが「ポートフォリオ」です。ポートフォリオとは作品集のことであり、デザイン系の会社への応募にはほぼ必須の資料です。
Web制作を目指すのであれば、自分が管理しているサーバーにポートフォリオページを作成して、そのURLを応募先の企業に伝える方法が一般的です。
一方、紙のデザインを主体とする会社の場合、自分でデザインしたチラシやパンフレットなどの制作物を印刷して面接の場で披露することもあります。
いわゆるクリエイター系の仕事では、資格や知識よりもクリエイターとしてどういった制作物を作り出せるのかが評価されます。そのためにはポートフォリオを作りこむということが何より重要な作業と言えるでしょう。
プログラミング言語
プログラマーやエンジニアを目指すのであれば、最低1つはプログラミング言語を身に付けてアピールすべきです。
プログラミング言語と一口に言っても種類は多くあります。Web系のエンジニアであれば、PHP、JavaScript、Pythonなどが現在は人気があります。
スマートフォンアプリの開発であれば、JavaやC#、Kotlin、Swiftなどでしょうか。
これらのプログラミング言語のアピールにおいても、過去に自分が開発したソフトやサービスのアピールが効果的です。オープンソースのソフトウェア開発に貢献しているのであれば、それも併せてアピールすると良いでしょう。
プログラミング言語を身に付ければ、高収入なIT企業への就職も視野に入ってきます。スキルを身に付けるのは一朝一夕では難しいのですが、チャレンジする価値は大いにあるでしょう。
会計ソフト
経理を目指すのであれば、会計ソフトのスキルを身に付けていたいところです。具体的にはパソコンで動作するタイプの弥生会計や、クラウドで動作するマネーフォワードクラウド会計などです。
会計ソフトで行う作業の大半は仕訳入力です。これには簿記の知識が必須です。経理を希望するのであれば、最低でも日商簿記3級、できれば日商簿記2級まで取得しておき、それと併せて会計ソフトの操作スキルをアピールすれば、内定獲得の可能性がグッと高まるはずです。
【NG例】パソコンスキルのアピールでやってはいけないこと
パソコンスキルをアピールするときに、やってはいけないNG例があります。ここではそのNG例について解説します。
【NG例1】なんでもできます
「なんでもできます」
とアピールする求職者がいますが、これは避けた方が良いでしょう。パソコンを必要とする作業は膨大にあるため、なんでもできると言ってしまうのは、誇大な表現と捉えられてしまう恐れがあります。
パソコンスキルに関して本当に専門性がある人は「なんでもできます」なんてアピールはしないはずです。なぜなら専門分野のパソコンスキルがある人は、専門分野以外のパソコンスキルが身に付いていないことを分かっているからです。
たとえ本当にパソコンで出来ることが多くても、就職活動時に「なんでもできます」とアピールするのは避けた方が良いでしょう。
【NG例2】一通りの操作なら大丈夫です
「一通りの操作なら大丈夫です」
というアピールも避けた方が良いでしょう。できればもう少し具体的にアピールするべきです。
「Wordでラベル印刷をする際に必要となる差し込み印刷機能がつかいこなせます」
「Excelで関数とグラフを使った分かりやすい資料を作成できます」
このように使用できるソフトとそのソフトでできることを具体的にアピールするのがおすすめです。そうすれば採用担当者も「この障害者なら自社のあの仕事を依頼できそうだな」と前向き採用を検討してくれる可能性が高まるでしょう。
【NG例3】パソコンは得意です
「パソコンは得意です」
というアピールをしてしまう障害者も多いのですがこれも避けるべきです。
障害者雇用では高度なパソコンスキルというよりも、一定レベルのスキルでもくもくと働いてくれる人の方が重宝されます。
あんまり「パソコンが得意」っていうことをアピールしてしまうと、若干嫌味の捉えられたり、嘘をついていると思われたりするリスクがあります。
アピールすべきことはしっかりとアピールしつつ、それでも謙虚な姿勢を見せるというのが就職活動の鉄則です。ここら辺のバランスがとれているかどうかも採用担当者もチェックしています。
アピールできるパソコン系資格
就職活動時にアピールできるパソコン系資格を紹介します。
MOS
MOSはWord、Excel、PowerPoint、Accessなどのオフィスソフトのスキルを証明できる国際資格です。障害者雇用においても非常に人気のある資格であり、求人票でも「MOS資格所有者を優遇します」と書かれていることもあります。
MOSの試験では実際にパソコン上でWordやExcelを操作して解答します。知識に加えて操作スキルも問われるため実践的な資格ですが、合格の難易度はそれほど高くありません。
MOSに関する詳しい解説を知りたい方は以下の記事をご覧ください。
日商PC検定
日商PC検定は日本商工会議所が実施しているパソコンスキルの認定試験です。
「文書作成」「データ活用」「プレゼン資料作成」の3つの分野があり、それぞれ1級、2級、3級、Basicの4つのレベルがあります。それぞれ、Word、Excel、PowerPointのスキルについて問われます。
日商PC検定は公的な資格であることから、知名度や信頼性も高く、1級レベルになるとMOSよりも高度なスキルが求められます。
ITパスポート
ITパスポートは情報処理推進機構(IPA)が実施している国家資格です。
WordやExcelのような具体的なパソコンの操作ではなく、ITに関する基本的な知識がマークシート形式で問われる資格となっています。
知名度も抜群で、書店に行けばITパスポート試験の対策書も山のように販売されています。
情報処理の国家資格の中では最も難易度の低い資格ですが、それでも初学者にとっては難しい資格です。合格を目指すのであれば、最低でも1か月くらいの勉強が必要だと考えた方が良いでしょう。
P検
P検は「ICTプロフィシエンシー検定試験」の略語であり、実技と知識の問題がバランスよく問われる資格です。
1級、2級、準2級、3級、4級、5級の6個の区分があり、履歴書に記載するのであれば準2級以上が評価されやすいでしょう。
就労移行支援施設でもP検を取り入れている事業所が多く、2年間の就労移行のカリキュラムでも3級までは目指すことが多いようです。
ただ知名度的にはMOSやITパスポートには劣っているので、もし就職活動時でアピールするのであれば、MOSやITパスポートを優先した方が良いでしょう。P検はあくまでも自分自身のパソコンスキルを高めるために活用するというのがおすすめです。
一番効果的なのは実務経験
パソコンスキルのアピールで最も効果的なのは実務経験です。正直なところ資格や個人的にに見つけた知識よりはるかに評価されます。
しかし、最初は誰でも未経験からのスタートです。そこで意欲を表したり、スキルを身に付けたりするのに効果があるのは資格です。パソコンに関する資格は数多くあり、易しいものから難関資格まで様々です。
努力してそれらの資格に合格できたら、積極的にアピールしたくなる気持ちが湧いてくるのも理解できます。しかしパソコンスキルはあくまでも仕事を円滑にするための手段でしかありません。そのことを理解したうえで、謙虚な姿勢を忘れずにアピールできるかどうかが、障害者雇用の就職活動を成功させる鍵となるでしょう。