この記事ではこんな疑問に答えます。
就職を希望する障害者に対して、ビジネスマナーや仕事に必要なスキルを訓練する施設が就労移行支援事業所です。
現在、就労移行支援事業所は日本全国に存在しており、それぞれの事業所ごとに特徴のある訓練プログラムを提供しています。
私も就労移行支援事業所を利用して、実際に就職を成功させた経験があります。
しかし利用者の中には、就労移行支援を利用しても就職できなかったり、途中で利用を止めてしまう方もいらっしゃいます。
就労移行支援を使っても就職できない人は、どのような人なのでしょうか。この記事では、就職できない利用者の特徴と、就職を成功させるポイントについて詳しく紹介します。
たちばな
統合失調症の当事者のたちばなが執筆しています。デイケア・就労移行支援・就労継続支援A型・障害者雇用・クローズ就労など様々な働き方を経験し、現在はフリーランスのWeb制作者として活動しています。Web制作は1999年から始めたベテラン。スキルを生かして統合失調症などの障害者でも自分らしく働くための情報を発信中です!
・就労移行支援を利用しても就職できるとは限らない
・就労移行支援を利用しても就職できない利用者の特徴
・就労移行支援で就職を成功させるポイント
社会人経験が少なかったり、就職に向けて資格・スキルを身につけたい人は就労移行支援の利用がおすすめです。まずは見学・体験から始めましょう。
・【東京】atGPジョブトレ 統合失調症コース(統合失調症特化型)
・【全国】LITALICOワークス(一般型)
・【東京・大阪】キズキビジネスカレッジ(専門スキル型)
目次
就労移行支援で就職できない利用者はいる
結論から言うと、就労移行支援を利用しても、就職できない利用者はいます。よくある例としては、途中で通所を止めてしまった利用者や、がんばって就職活動しても、どこからも採用されなかった利用者などです。
就労移行支援は原則2年間という時間制限があります。基本的にこの2年間で訓練プログラムを終了して、就職活動を行い就職できなければいけません。
もし就労移行支援を利用して一般就労ができなかった場合、就労継続支援A型やB型の利用者として働く、福祉的就労が勧められることがあります。このような働き方は、一般就労と比べて賃金も安いため、生活を安定させるのは難しいかもしれません。
就労移行支援を利用して就職できない人の特徴
就労移行支援を利用して就職できない人の特徴を5つご紹介します。
安定した通所ができず休んでしまう人
就労移行支援は通常、月曜日から金曜日まで開所しています。利用者の方は将来、一般就労を目指すわけですから、最終的には週5日利用することを促されます。
しかし決められた通所日に頻繁に休んでしまったり、遅刻が多かったりする人は、かりに就職できても勤怠が安定しないだろうと支援者から思われてしまい、就職活動を始めることはできないと評価されます。就職活動が遅れると、応募できる企業数も少なくなり、就職できる確率も下がってしまいます。
そうならないためには、利用開始時は週2日の通所からスタートして、少しずつ利用日数を増やしていき、少しずつ就労移行支援になれていくことがおすすめです。
自分の障害を客観的に捉えられない人
就労移行支援を利用して一般就労を目指す場合、ほとんどは障害者雇用での就労を目指すことになります。障害者雇用で就職するためのポイントは、自分の障害を客観的に捉えられるようになることです。特に精神障害者の場合、しんどくなる条件や、得意なことや不得意なことを適切に把握して、どのような配慮が必要なのか、就職希望先の採用担当者に伝えなければなりません。
このような必要な配慮を伝えられなければ、仮に採用されて仕事を始めても、しんどくなったときに適切な配慮が受けられません。
面接時では特に自分の障害を面接官にうまく伝えなければなりません。障害自体はデメリットかもしれませんが、企業にとっては、本当に必要な配慮が把握できることは、障害者雇用におけるメリットになります。そのためには自分の障害を客観的に捉えられることが大切です。
給与などで高待遇な就職希望先ばかり探す人
一般的に障害者雇用では賃金も安く、アルバイトや契約社員などの条件の求人ばかりです。しかし中には給与が高く、正社員での求人が含まれていることもあります。
そのような高待遇な企業には、多くの就職希望者が集まってしまい、自分が就職できる確率が極端に低くなってしまいます。また選考のプロセスも多く、就職活動自体がしんどくなりがちです。
さらに高待遇の企業は、入社後にも高いレベルのアウトプットが求められることが多く、周りの健常者の社員と比べられて、しんどい思いをすることもあるでしょう。
高待遇の求人に応募する際には、そのようなことも知っておくことが必要です。必要以上に自分を卑下する必要はありませんが、自分の能力に見合った働き方ができる会社で働くのが、長く働き続けるコツです。
就職希望先とミスマッチしている人
自分のやりたい仕事や仕事で生かせるスキルと、就職希望先でやる仕事や必要となるスキルがミスマッチしていると、面接時に面接官からつっこまれて、不採用になりやすいです。
企業へ応募するときに求人票を見ることがありますが、求人票で真っ先に見るべきポイントは、仕事内容です。まずは、求人票に書かれている仕事内容が、自分のやりたい仕事やできる仕事であるかどうかを確認して、それから給与や必要な資格などを確認しましょう。
就労移行支援の利用者の中には、給与だけみて応募しようとする方が多く、よく支援員からつっこまれていますね。
就職活動に受け身な人
出来れば働きたくない方や、あまり就職したくないという方も、就労移行支援の利用者にはいらっしゃいます。しかし通所を続けていれば、いつかは就職活動をしなければならないというのが、就労移行支援というサービスです。
支援員の方は、さまざまな面で就職活動をサポートしてくれますが、最終的には就職するのは利用者である自分です。自分が主体となって就職活動を続けなければ、意味がありません。
就職するということは、会社やお客様のためにがんばって働くことです。それはとてもつらいことですが、がんばれば給料という形で、見返りを受け取ることができます。たとえ少ない金額でも、自分で稼いだお金です。
就職できれば、お金を稼ぐことができます。少しいやらしい話かもしれませんが、お金のために働くというのも、仕事をする立派な理由だと言えます。
ともかく、働くことについて自分なりの動機が無ければ、就職活動が受け身になりやすく、就職も遠のいてしまうでしょう。
就労移行支援を利用して就職を成功させるポイント
ここまでで就労移行支援を利用しても就職できない利用者の特徴を紹介してきました。それでは就労移行支援を利用して成功させるためには、どうしたら良いのでしょうか。そのポイントを説明します。
自分にあった就労移行支援事業所を探す
まずは自分にあった就労移行支援事業所を探しましょう。就労移行支援事業所と一口に言っても、訓練内容はさまざまです。
最近ではITやWeb制作を学べる事業所が多いようです。例えばHTMLやCSS、PHPやJavaなどのプログラミング言語、そしてAdobe PhotoshopやAdobe Illustratorなどのグラフィックソフトなどですね。
また特定の障害に特化した就労移行支援事業所もあります。統合失調症専門や発達障害専門の就労移行支援事業所です。
多くの就労移行支援事業所では、体験期間を設けています。実際に見学に行って利用しようかなと思っているのでしたら、まずは体験からスタートすると良いでしょう。
また利用を検討している就労移行支援事業所の就職実績や、就職先の企業の情報なども聞いておきましょう。就労移行支援事業所のWebサイトに掲載されていない内容でも、その事業所の支援員の方に直接聞けば教えてくれることがあります。実績が豊富で卒業生の定着率も高い事業所であれば、積極的に教えてくれるので、利用する場合には、そのような就労移行支援事業所を選択することをおすすめします。
安定して通所する
就職を成功させるためには、就労移行支援事業所に安定して通所できるようになりましょう。最終的には週5日の利用ができるようになれば安心です。
安定して通所するためには、規則正しい生活が必要です。見たいテレビや遊びたいゲームがあるかもしれませんが、生活の基準を少しずつ就労移行支援事業の利用に合わせていきましょう。
いきなり週5日の利用は難しいかもしれませんので、まずは週2日からスタートして、徐々に利用日数を増やすのがおすすめです。
また通所をしていていしんどいときや、不安なことがあるときは、支援員と面談して状況や気持ちを整理しましょう。就労移行支援事業所の支援員は、就職の支援だけではなく、利用者のメンタル面でのサポートもしっかりとやってくれます。困ったことがあったら、とりあえずなんでも支援員の方と相談することにしておけば、気持ちの面でも安定して通所できるでしょう。
積極的に就職活動する
就労移行支援を利用して、一通り訓練が完了したら、いよいよ就職活動です。たとえ障害者雇用でも、就職を希望している人は大勢います。採用されるためには、自分がほかの障害者より優れていることをアピールしなければなりません。
就職後の生活を考えて不安な気持ちになったり、不採用が続いて気持ちが落ち込んだりすることは、多くの障害者に共通することです。そのようなネガティブな気持ちを整理して、積極的に就職活動を続けられた方が、就職を成功させます。
就労移行支援事業所によっては、卒業生の体験談などを聞く機会もあります。自分と同じ時期に通所していて、先に就職した利用者もいるでしょう。そういった自分と近い立場の人の話を聞くことも、積極的に就職活動するための強いモチベーションとなるでしょう。
障害者でも働けば豊かになる
就労移行支援で就職できない利用者の特徴と、就職を成功させるポイントを紹介しました。障害者の中には、一度も仕事をしたことがなく、就労移行支援を利用している方もいらっしゃいます。働いたことがない障害者にとって、働くことをイメージするのは、なかなか難しいことです。
その場合、まずは利用している就労移行支援事業所を職場だと思って利用するのがおすすめです。例えば、ほかの利用者を「同僚」支援員を「上司」と捉えるような考え方です。
自分の就職を成功させるために、利用している就労移行支援事業所は賢く使いましょう。