この記事ではこのような疑問にお答えします。
23歳で統合失調症と診断された私は、自宅に引きこもってネットゲーム三昧の日々を送っていました。
今思えばこれが統合失調症の陰性症状だったと思います。
しかし26歳の冬に突然、私は被害妄想や盗聴されていると思い込む陽性症状が現れました。
「監視されている」
「命を狙われている」
今からすればあり得ない話ですが、陽性症状を発症したばかりの私にとっては、これは現実のものに思えました。
同居していた家族にそんなあり得ない主張を繰り返した結果、半ば無理やりの形で、精神科病院の閉鎖病棟へ入院させられてしまいました。
今回は実際に精神科病院の閉鎖病棟に入院経験がある私が、閉鎖病棟の様子やどんな人が入院していたのか、わかる範囲で紹介します。
たちばな
統合失調症の当事者のたちばなが執筆しています。デイケア・就労移行支援・就労継続支援A型・障害者雇用・クローズ就労など様々な働き方を経験し、現在はフリーランスのWeb制作者として活動しています。Web制作は1999年から始めたベテラン。スキルを生かして統合失調症などの障害者でも自分らしく働くための情報を発信中です!
・精神科病院は怖いところではありません
・閉鎖病棟への入院の目的の一つは自分にあった薬を見つけるため
・幻聴がキツイ患者さんは叫んだりしてます
精神科病院とは?
精神科病院とは統合失調症や躁うつ病など、精神的な病気を治療することに特化した病院です。
治療といっても病気の種類によって様々です。私は統合失調症だったので、服薬による治療がメインです。
私は精神科病院を退院してから10年以上たちますが、現在は8週間に1日の外来による診察を受けています。
外来では待合室を見ても、外見では健常者とさほど変わらないような人が多く座っています。
よく、
「精神科病院に通院歴のある人はやばい」
と言われますが、実際にやばい人を私は見たことがありません。
特に統合失調症の場合、薬によって陽性症状はすぐに収まってしまうので、むしろおとなしすぎる人の方が多いくらいです。
また数ある医療の中でも、精神科はチーム医療が進んでいると言われています。
主治医は精神科医ですが、その周りには、リハビリを指導する作業療法士や、社会福祉士や精神保健福祉士などの相談相手、そして当然ですが看護師による適切なケアなど、1人の精神障害者を治療するために、多くのスタッフがチームを組んで治療を行っていることも精神科病院の特徴です。
閉鎖病棟に入院する目的
精神科病院の閉鎖病棟について詳しく知らない人は、とにかく怖い所だと思っているかもしれません。
しかし実際にはそんなに怖いところではありません。多くの閉鎖病棟は精神科病院の中でも、治療期間が3か月程度の急性期医療にあてられています。
つまりしっかり治療すれば3か月で退院できる人が集まっているのが、精神科病院の閉鎖病棟です。
そして閉鎖病棟が閉鎖されている理由は「危ないから隔離する」のではありません。
外部からシャットアウトされた環境で落ち着いて治療に専念するというのが本当の理由です。
例えば統合失調症などの精神疾患において薬を飲むこと(服薬)が重要な治療の一つです。
しかし同じ統合失調症でも様々な種類の薬があります。そのため患者にとって最も効果的で副作用の少ない薬を、病院という守られた環境で探す、というのが閉鎖病棟に入院する最大の目的です。
もしきつい副作用が発症しても、病院の中ならば迅速に対応することができるからです。
閉鎖病棟での生活
私が入院していた閉鎖病棟は朝6時起床で夜9時消灯でした。
これは他の科の病院とあまり変わらないかもしれませんね。
しかし精神科病院では他の科とは大きく異なる点があります。
入院患者の状態によって病室が大きく分かれている点です。精神科病院の閉鎖病棟には主に「保護室」「観察室」「多床室」の3つの部屋があります。
保護室 | 状態が悪く、暴れたり自傷したりする可能性があるため、隔離するための部屋。 |
観察室 | 入院直後で患者の様子をナースステーションから直接確認できる部屋。動物園の檻みたいに全面ガラス張り。 |
多床室 | 症状が安定している人のための部屋。他の患者さん4人~6人と同じ部屋ですごす。 |
入院患者は病状によって、この3つのうちのどれかの部屋へ入れられることになります。
普通に過ごしていれば保護室に入れられることはありません。
私も保護室に入れられたことがないのでよく知らないですが、体験者によると暗くて牢獄のような部屋だと言っていました。
多くの入院患者は服薬により症状が安定するので、多床室にいることになります。
閉鎖病棟ではハサミなどの刃物やライターは持ち込み禁止です。
外でたばこを吸う人は、ナースステーションに預けてあったライターとタバコを受け取り、外でタバコを吸って、閉鎖病棟に戻る時に、ライターとタバコをナースステーションに預ける仕組みになっていました。
閉鎖病棟での入院生活ですが、朝・昼・晩の服薬指導、そして食事のための食堂への移動など、必要最低限の活動以外は完全に自由に過ごせます。
症状が安定すれば、病院外への外出も可能です。
私は入院してから3週間後には外出許可が貰えたので、近所にあるスーパーマーケットでお菓子を買って病室に持ち込んだりしました。
また患者さんによっては日中に何らかの作業をしている人もいました。病院には作業療法士が常駐しているので、その指導の下、ちょっとした革細工を作ったり、書道などを楽しんだりしている人もいました。これも治療の一環なのだと思います。
閉鎖病棟にはこんな人がいる
多くの精神障害者は大人しい人ばかりですが、閉鎖病棟には少し怖い人もいたのも事実です。
例えば私が入院していた時、統合失調症の人で幻聴がきつい患者さんがいました。
私も統合失調症ですが幻聴が聞こえるタイプではありません。
しかしこれの幻聴というのは、結構きついみたいです。
本当はあるはずのない声が聞こえる幻聴の中身は「死ね」とか「消えろ」とかそんなネガティブな言葉ばかりのようです。
患者にとって知覚できることってリアルなんですよね。
だからどうしてもそんな声が頭の中で聞こえると反応してします。
「うるさい!」とか「だまれ!」とか幻聴きつい患者さんは、廊下を歩きながら、こんなことを叫んでいました。かなり大きな声で怒鳴っていたので、ちょっと怖かったですね。
まとめ
精神科病院の閉鎖病棟についてざっくり紹介してきました。
健常者にとっては全く縁がない施設なので、事実とは違った思い込みや偏見があるかもしれません。
私は3か月間の入院期間で退院できましたが、現実には「社会的入院」と呼ばれる数年から数十年も入院している患者さんもいます。
退院後の生活先が確保されていないため、このような長期間の入院になっているケースです。
このように精神科医療の目的は病気を治療するだけでなく、治療と並行して患者の生活までサポートすることが求められています。
難しい課題ですが、精神科医療のこれからの発展に期待せざるをえません。